愛用のダイビング器材

World Dive IC9700 テクニカル仕様シェルドライスーツ

過去には海外製のシェルドライスーツを数着使用しましたが、今はWorldDiveのシェルドライスーツを10年以上5~6着を経て開発に関わりながら愛用しています。

過去、ブルークエストの田中さんやオケアノスの池田さんがアドバイザーで入り改良を加えてくれていました。
またテスターで現地ガイドのコンカラーの幸太郎さんが耐久テストをしてくれていたり、写真家の古見きゅうさんもワールドダイブのアンバサダーとしてシェルを愛用しています。私もずっと関わらせてもらっています。
様々なノウハウが役立てられて、国産のシェルドライが開発されていることに感謝です。

ワールドダイブさんのシェルドライは、もともと横ファスナーが定番なんです。
テクニカルダイビングの際に、この横ファスナーがベルトに干渉したり、器材コンフィグを整えるうえで、改良してほしいと要望を出していました。

数年前、ワールドダイブの社長と相談役と近しい関係にある東京の石川総一郎さんに付き添ってもらい、奈良にあるシェルドライスーツ工場まで自らシェルドライの開発を行うワールドダイブ社長と相談役に会いに行きました。
そこで、より理想の形になるように要望を伝えさせていただきました。
その後も営業の高橋さんや井崎さんとやり取りを重ね、テクニカルダイビングで、サイドマウントでもバックマウントでもCCRでも快適に使用できるような仕様を開発していただきました。いまはカタログにもIC9700という品番で露出するようにもなりました。ただ細かなところは私の仕様はカタログとはすこし違いがあります。

http://www.worlddive.co.jp/product/data/DRY_05_IC9700-IC7200.pdf

そんな私の使用するテクニカルシェルドライスーツについて、ちょこちょこ問合せをもらうようになりました。
仕様についてどうするといいのかわからなくてお問合せをいただいています。
遠方の方ですと、実物見せてご説明することもなかなか難しいので、このブログに画像と共にちょっと解説しておきたいと思います。

デザイン
まず、これが全体的なシルエットになります。
過去のワールドダイブのシェルは、着脱性をスムーズにするために、全体的に大きめのシルエットでした。
実際に使用してみると、かさばってごわごわすることは、ストリームラインに影響を与えますし、余った生地と生地が干渉することで、生地がダメージを受け、生地の傷みから水没の原因にもなってしまいます。そこで干渉しやすい膝回りなどを極限まで、細身に仕上げてもらいデメリットを軽減してもらいました。

素材
素材ですが、メーカーさんが世界各地で、より軽くて頑丈な素材を探し回って、何回ものテストを行い、理想的な素材を採用してくれました。アルティメイトクロス・ハイパーといいます。私以外にもスタッフの鐵本や新田が仕事で愛用していますが、なかなかの耐久性です。しかしなんども摩耗すれば当たり前ですが損傷して水没することになると思います。対策としてダイビングスキルを向上させ、スーツ素材に負担をかけないようにすることも大切です。また陸上でも水中でも膝をついて生地を摩耗させることは大きなリスクです。着底して水中写真など行う人は、膝パットをつけることをお勧めします。

ファスナー
一番苦労していただいたのが、ファスナーです。斜めファスナーを何年もかけてテストして開発してもらいました。
斜めファスナーは体格に合わせて、ファスナーの長さを調整しなければいけません。なかなか豊富なファスナーの長さのバリエーションが少ない中、YKKとTジップの長さの違いを利用して、多くの方にとってちょうどいい長さになるように調整をしてくれています。耐久性ではYKKが優れていますが、ファスナーを空けた状態では、ファスナーが簡単に破損し水没の原因になります。このあたりはドライスーツを熟知したインストラクターに取り扱い方法を確認して、長く愛用できるようにしてください。
Tジップも優秀なファスナーですが、万能ではありません。注意点を確認して使用していただきたいです。ファスナーは体格によって、どちらのファスナーがジャストフィットするかは分かりません。採寸データから、メーカーの職人にお任せしていました。いまはTジップマスターシールが標準になっています。体格によってはYKKへの変更も可能だと思います。
私はファスナーを右肩から左腰に斜めに取り付けてもらっています。これには理由がありまして、ファスナーを右肩から開けられるようにすることで、給気バルブを左寄せすることができます。サイドマウントの場合は、右からドライスーツ給気用のカプラーホースがでてきます。例えば、給気バルブが右寄りになりますと、とても短いドライホースが必要となり、短かすぎるホースはとても取り回しがわるくなると感じています。そこで、ファスナーを右肩から始めることで、給気バルブを左寄せにつけられるようにしています。あくまでこれは私の個人的な好みです。

給気バルブ
ファスナーの位置を変更することで、給気バルブの位置はとてもよくなりました。またワールドダイブの給気バルブは、上から押すタイプではないため、閉鎖環境で、なにかに接触して、予期せずして給気されてしまう可能性が低くなっています。

排気バルブ
テクニカルダイビングでは、ホリゾンタルトリムといって水平姿勢を基本とします。
通常ですと、ドライスーツの排気は、立ち姿勢になることで簡単に排気ができるようになります。
しかしテクニカルではそのような大きな姿勢変化なく、最小限の姿勢変化で排気を行いたくなるものです。
そこでこのバルブの位置もホリゾンタルトリムからほんの少し姿勢変化するだけでも排気ができるバルブの位置を指定しています。そのために生地の張り合わせるデザインなども変更してもらいスーツ職人さんには長年にわたって研究をしてもらいました。
また排気バルブはオートとロックをボタンひとつで簡単に切り替えができ、手動の排気も操作がしやすいです。
また故障がとても少ないこともポイントが高いです。
私の場合のバルブ使用方法は、エントリーから潜降まではオート。身体が安定したらロックにして、余分なエアがロスしないようにしています。また浮上を開始するころには、オートにしてマニュアル操作をしなくても姿勢変化だけで排気できるようにしています。

リスト排気バルブ
オプションでリストバルブが選べます。バルブを回すことで、オートとロックに変更ができます。
メインの排気バルブと同じく、エントリーから潜降まではオート。身体が安定したらロックにして、余分なエアがロスしないようにしています。また浮上を開始するころには、オートにしてマニュアル操作をしなくても姿勢変化だけで排気できるようにしています。

ファスナーは防水ファスナーを保護するためのアウターファスナーも採用されています。

クロッチバンド
シェルは着用するために上半身はすこし長めになっています。その余った上半身の生地を折り返して、体にフィットさせます。そして画像の赤い▼からでているクロッチバンドでとめています。
クロッチバンドは必要なのですが、このバンドが股で擦れて、股の生地が損傷して水没することが多かったです。
そこでクロッチバンドにはシェル生地と同じカバーをつけてこすれにくくしてもらっています。
そしてテクニカル器材は、ほとんどのユニットからもクロッチバンドが採用されています。
そこで今年からはすべて股の素材を二重構造にして擦れても水没しないような構造に変更してもらいました。

サイドポケット
サイドマウントではサイドポケットはあまり使用しませんが、バックマウント系の器材では、サイドポケットは必須です。オプションで両サイドに取り付けができます。

ゲイタ―
ドライスーツの膝下からブーツには余分な空気が入ることはできるだけ防ぎたいものです。
ワールドダイブの膝下は、オプションでゲイタ―といってベルクロで足回りにスーツをフィットさせることができます。

ブーツ
ノーマルは、一般的なドライスーツ用ブーツが一体化されて取り付けられています。着脱が容易で、一般的には、ドライスーツ用ブーツがお勧めです。しかし使用上の大きな注意点があります。シェルドライスーツは、もしも体が逆立ち状態で足にエアが溜まると、その浮力で、ブーツが足から抜けてしまうことは可能性としてあります。この状態になると、完全にフィンキックでのコントロールが失われます。このようなトラブルをさけるため。ドライスーツSPなどで、ドライスーツ内のエア移動テクニックや吹き上げ防止テクニックはマスターすべきです。
もしもスーツの着用に時間的な猶予が持てる環境のダイバーさんなら、もうひとつの選択肢としては、シェルドライスーツと一体化したウエット生地のソックスにしてしまうのもひとつです。その上から、シューズを履きます。現在、ワールドダイブではシューズはラインアップされていないため、自身でちょうどいいブーツを探さなければなりません。紐でしぼるようなシューズをはくことで、足に空気が溜まりフィンが外れてしまうような事態はさけられるようになります。デメリットは、着脱により一層時間がかかることです。

ネックシール・リストシール
シールは一つ目は、ラテックスタイプが選べます。予備のシールを携帯しておくことで、もしものシールの破れの時も、すぐに交換ができることが魅力です。また、これらのシールの方がフィット性がよく水没しにくいと評価するダイバーさんも多いです。

私は、日本のドライスーツでよく採用されているネオプレーンのシールを採用しています。理由としては、シリコンやラテックスのような交換用のリングがないため、手首や首回りがすっきりするからです。また昔からドライスーツのシールはネオプレンで慣れているため、私は慣れているためだと思います。またネオプレンは破れたとしても、ある程度の破れであれば、スーツボンドで接着でき、翌日のダイビングでもなんとか使用可能だからです。
アフターフォロー
ワールドダイブには二年間保証が付いており、二年の間のシールの損傷は、無償で交換をしてくれるというアフターフォローも含まれています。
国産の利点はやはり、修理の際のアフターフォローの充実さと修理期間の短さです。

注意点
いかがでしたでしょうか? あくまで個人的な好みを含む内容ですので、参考の一つとしてもらえたらいいかなと思います。
また使用に関しては、個々の責任でお願いします。ドライスーツは商品の性能だけでなく、使う側のテクニックや使用法によってリスクが大きくなる場合もあります。ドライスーツを熟知したインストラクターからのアドバイスとトレーニングをしっかり受けられることをお勧めします。
当社でご購入の際は、このシェルドライスーツを熟知したインストラクターが責任もって対応いたしております。

ワールドダイブ_IC9700_加藤大典仕様
ネックシール: クロロプレン・ソリッドネック
リストシール: UMSフラットスキン
ファスナー: 右肩から左ウエスト YKK PROSEAL(※体格によって選択できません)
フットタイプ: 高比重クロロプレンソックス(※通常はドライブーツをお勧めします)
オプション: ガータシステム リストバルブ サイポケット追加

撮影協力 戸村裕行氏 https://www.hiroyuki-tomura.com/about