防衛的安全管理 ― 初心者講習での「5秒に一回のチェック」は現実的ではない?

防衛的安全管理 ― 初心者講習での「5秒に一回のチェック」は現実的ではない?

前回、日本の潜水事故を減らしたい。自分にできることは何か?

先日書いた記事に対して、多くのコメントやご意見、ご相談をいただきました。その中で「5秒に一回なんて現実的にできない」という声もありました。確かに容易ではありませんが、この防衛的安全管理メソッドは、事故の確率を極限まで低くできる理想的な方法だと考えています。今回は、その「5秒ルール」について少し深掘りしてみたいと思います。

ダイビングの安全管理について語るとき、私はよく「初心者講習では5秒に一回、全員を確認すべきだ」と提案します。これを聞いて「現実的ではない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この「5秒ごとのチェック」は、SDIやRSTCの基準に明記されているものではありません。あくまで、私自身が師匠から学んだことを言語化した一つの考え方です。
決してSDIのスタンダードではありません。安全に初心者を管理するための私からの提案です。


5秒ルールの意味ともう一つの要素

「5秒以上目を離さない」というのは、未経験ダイバーのリスクを考えたときに導かれる一つの方法です。
100回大丈夫でも、101回目に事故が起こる――リスク管理とはそういうものです。だからこそ、防衛的安全管理(Defensive Safety Management) の姿勢が重要になります。

そしてもう一つ大切な要素が、講習生との距離と位置関係です。
インストラクターが受講生を安全に管理するためには、単に時間ごとの確認だけでなく、正しい距離感とポジショニングを維持することが不可欠です。これらを総称して「グループコントロール」と呼びます。
インストラクタートレーニングでは、これらのスキルトレーニングに重きを置いています。


トレーニングによって可能になるスキル

「5秒チェック」や「距離と位置の管理」は、理想論ではありません。
私が20年以上インストラクター養成に関わってきた中で、候補生全員が訓練を通じて達成できています。適切なトレーニングを積めば、誰にでも身につけられるスキルです。

インストラクターにとって大切なのは、単なる体力や運動神経ではなく、浮力コントロールとスキルを極めること。それが達成できると余裕が生まれ、アウェアネス(全体を把握する力)を発揮できます。
「全ての動作を見ないで行えるようになること」が完成形であり、そのためには繰り返しの実践が不可欠です。


IDCとエントリーレベルでの重要性

私たちが開催している IDC(Instructor Development Course) では、スポーツダイビングでもテクニカルダイビングのコースでも、この防衛的安全管理を重視しています。

特に、ノンダイバーを水中で活動させる SDIスクーバディスカバリーコース(体験ダイビング) や、SDIオープンウォータースクーバダイバーコース(入門コース) では、インストラクターの責任は非常に大きく、よりディフェンシブな安全体制が必要です。

こうしたスキルは理論だけではなく、実際のウォータートレーニングで体を使い、講習を模した状況で身につけることが不可欠です。頭で理解するだけではなく、心と体で納得し、感覚的に習得していくプロセスが求められます。


継続的なアップデートトレーニング

アクティブな有資格のあるインストラクターの方たちにも、SDI TDIアップデートトレーニングを定期的に開催し、この「防衛的安全管理の感覚」を体得したり思い出してもらったりする機会を設けています。
安全管理の基本は、一度学んで終わりではありません。定期的にアップデートし、自分の感覚と判断を常に磨いていく必要があります。


伝わっていく「目に見えない価値」

私のショップevisでも、防衛的安全管理を一貫して大切にしてきました。
その姿勢が伝わり、「自分の大切な人を安心して任せたい」とご家族や友人から紹介をいただくことが増えています。これはすぐに数字で表れるものではありませんが、確実に伝わっていく「目に見えない価値」だと感じています。


これからインストラクターを目指す人へ、現場に違和感を持つ人へ

👉 5秒ルールも距離と位置関係も、防衛的安全管理の一部です。
そしてそれは、訓練によって誰もが習得できるスキルです。

これからインストラクターを目指す方や、現状のダイビング環境に違和感を持っている方へ。
どうか「安全を守る力」こそが最大の価値であることを忘れずに、一緒により良い未来をつくっていきましょう。
ここに取り上げたスキルを身に着けたい方はお気軽にお問い合わせください。

投稿者のプロフィール

株式会社インターナショナルトレーニング代表取締役DaisukeKato
ダイビング教育機関SDI TDI ERDI JAPANの代表を務めております。小さな頃から水の中への憧れが強く、潜水部のある大学に入学しダイビングを始めました。ダイビングを始めてみると、やはり最高に楽しくて、在学中にインストラクターを取得し、卒業後は尊敬するインストラクターの所属するダイブセンターに就職しました。5年の修行を積んで、ダイブセンターを創業しました。

これまで様々なコースで2000人以上の方にダイビング指導を行い、世界各地を引率してダイビングツアーを開催しました。またテクニカルダイビングに出会い、100m潜水や洞窟や沈没船のペネトレーション(内部侵入)やリブリーザーなど様々なダイビングを楽しんでいます。いまは指導団体SDITDIERDIの代表の仕事を中心にプロコースやテクニカルコースの担当もしています。2000年からダイビングショップの経営もしています。