クレージージャーニー出演 沖縄 南大東島 洞窟探検の記録 2020-2024 吉田勝次 × 加藤大典

クレージージャーニー出演 沖縄 南大東島 洞窟探検の記録 2020-2024  吉田勝次 × 加藤大典

プロローグ ― 未踏の地への誘い

こんにちは。加藤大典です。
なかなか時間がとれず、ブログにも書くことができていなかったのですが、とても価値ある探検なので、ここに記しておこうと思いました。
私は洞窟探検家・吉田勝次さんと共に、沖縄・南大東島の未踏水中洞窟探検に挑んできました。

僕自身は20年前からケイブダイビングを学び、フロリダやメキシコといった本場で訓練を積み、経験を重ねてきました。
しかし2020年のコロナ禍で海外遠征は不可能になり、悶々とした日々を送っていた頃、吉田さんから「南大東島を探検しよう」という誘いが届きました。

南大東島は沖縄本島の東約400kmに位置する絶海の孤島。石灰岩が400m以上積み重なった隆起環礁の島で、大小110もの湖沼が点在しています。独特の文化と景観を持つこの島で、未踏の水中洞窟を探検する――そう聞いただけで胸が高鳴りました。

南大東島という島

南大東島は沖縄本島の東約400kmに位置します。北大東島・沖大東島を除けば、周囲400kmに渡って陸地のない絶海の孤島。島の周囲は急深で、わずか数km沖に出れば水深は1,000mに達します。

この島はサンゴ礁が隆起してできた隆起環礁。大東諸島の形成はとても興味深く、約5,000万年前に日本から遠く離れた赤道付近で火山島として誕生し、その後地殻変動で移動しながら徐々に沈降。その過程でサンゴが育ち、裾礁 → 堡礁 → 環礁と形を変え、何千万年もかけて厚い石灰岩を形成しました。その厚さは400m以上にも及ぶといわれています。

現在の南大東島は、中央部がへこみ、外縁部が高くなったドーナツのような地形。外縁部を「幕」、高台部分を「幕上」、中央の低地を「幕下」と呼びます。幕に囲まれているため、島の内部から海を眺めることはできません。島内には大小110ほどの湖沼が点在しています。

この島は140年前に日本領となり、125年前に八丈島からの開拓者たちが入植しました。沖縄からの移住者も多いのですが、文化は沖縄本島とはやや異なり、素朴なサトウキビ畑が広がる風景が特徴です。


第1回遠征(2021年7月) ― 秋葉地底湖、初潜入

島にはガス充填施設がなく、名古屋からシリンダー20本を送り込み、大阪港まで吉田さんが運んでくれました。現地では洞窟ガイドの東さんが全面的に協力。島を愛し守るその姿勢に感銘を受けました。東さんの熱意に触れ、私たちも改めて南大東島の自然に敬意を払い、慎重に探検に臨むことを心に誓いました。

最初に探検を始めたのは、東さんがガイドを務める「秋葉地底湖」。
いまだこのサイトは私たちしか潜水許可が下りていません。現地との信頼関係のなかで聖域とされている場所です。
多くの人にみてもらいたい水中洞窟ですが、環境保護のために制限されているのです。

鬱蒼としたサトウキビ畑を抜け、林の中に口を開けた陥没穴を降りていくと、やがて地底湖へと辿り着きます。
ただし、そこに至るまでにダイビング器材をすべて運ばねばなりません。東さんにも手伝っていただき、重たい器材を運搬。StreamTrailのヨネスプローラーはシリンダー運搬にも使えるため、とても役立ちました。


洞窟内ではシートを敷き、環境を汚さないよう配慮しながら器材を広げます。
準備を整え、いよいよ潜水開始。エントリーすると白い鍾乳石が広がり、息をのむ美しさでした。

先へ進みたい気持ちを抑えつつ、まずはケイブダイビング用のリールからラインを出し、岩に固定しながら探査を開始します。この洞窟はトンネル状ではなく、いくつもの「ルーム(部屋)」が連なった構造。エントリー口のルームからひとつ下ると、大きなルームが現れ、天井には長く白いつらら石が形成されていました。まさに絶景です。

しかし、ここで立ちはだかるのが「パーコレーション」。ダイバーの吐いた泡が天井に当たり、付着物が剥がれ落ちて視界を奪う現象です。20分も同じ場所にいれば視界ゼロとなり、美しい景色は数日間見納めになります。

視界がなくなる前に通路を探すも広いルートは見つからず。翌日、濁りは残っていたものの視界が回復したため探索を再開。鍾乳石が乱立するエリアで、なんとか通れる隙間を発見しました。鍾乳石の林を抜けると、泳ぎやすい通路が現れ、徐々に深度を下げながら進みます。方角も海へ向かう方向で期待が高まります。

地底湖の水面は淡水ですが、深度を下げると塩味を感じました。海水が浸透している証拠です。さらに探索を続けましたが、やがて行き止まり。別の通路を探すと、吉田さんが狭いルートを発見。私が覗いた時は視界ゼロで吉田さんのフィンしか見えません。しばらく奮闘した吉田さんはスタックし、諦めて戻ろうとする様子。私は吉田さんの足を引っ張り、無事に引き出しました。
しかしエキジット後の吉田さんはまだ諦めていません。「次はまたあの先をチャレンジする」と言い切る。その執念には驚かされました。

吉田さんの地球探検TV  まだこのころは南大東島とは明かしていませんでした。

二日間の探検で濁りが強まったため、翌日からは別の洞窟を下見することにしました。
今回は下見。名古屋から送り込んだ限られたシリンダーでの探検となりました。

南大東島での探検は、まさに視界ゼロとの戦いでした。一般的なスクーバ器材(オープンサーキット)は呼吸ガスを吐き出すために泡が発生します。この泡がなければパーコレーションを最小限に抑え、視界を確保できるはずです。
私は15年前から「リブリーザー」と呼ばれるクローズドサーキットの器材を使用しています。泡を出さないメリットがある一方、重装備で狭い洞窟には不向きで、奥でトラブルが起きた際の解決方法も課題でした。
2020年、メキシコのセノーテでケイブダイビングを行った際、新型リブリーザー「KISS サイドワインダー」を目にしました。コンパクトな設計で、これからのケイブダイビングにおいて有望だと感じ、現地でトレーニングを受けました。いつか必ず南大東島での探検に役立つと確信しています。


第2回遠征(2022年10月) ― 再開への助走

2022年はコロナの影響で延期続きでしたが、秋にようやく再挑戦の準備が整いました。
南大東島には呼吸ガスの充填施設がありません。そのため吉田さんは、なんと移動式の充填設備を購入し、さらに多数のシリンダーを揃えて島に送っていました。やりたいことのために投資を惜しまない――まずはやってみる。その姿勢こそ、吉田さんが「洞窟王」と呼ばれるゆえんだと改めて納得しました。

南大東島に到着し、シリンダーを組み立て、ナイトロックスをブレンドして充填を繰り返す。とても小さなコンプレッサーなので、昼からはじめた充填も気が付けば日が暮れ始めていました。けれども、自分たちで呼吸ガスを確保できるということは、好きなだけ探検に挑めるということでもあります。

前回から1年半ぶり、秋葉地底湖での探検再開です。重たい器材を再び洞窟内に運び込みます。私は今すぐにでも潜りたい気持ちでいっぱい。しかし吉田さんは、なかなかエンジンがかからない様子でした。

「お腹すいたなー」「眠たいなー」「加藤さん、本当に潜るの?今日は帰ろうか~」
――そんな弱音(?)を口にしながら、やる気ゼロ全開。けれども準備が整ってくるにつれ、やがて“探検家・吉田勝次”のスイッチが入りました。探検とは、ダイバー自身、チーム、器材、そして環境、そのすべてが揃ったときにのみ始めるもの。だからこそ、この慎重さは大切なのです。

狭い通路の先へ
今回は、前回、吉田さんがスタックした場所を再び調べることにしました。そこには確かに狭い通路があります。私たちが使用しているのは「サイドマウント」。シリンダーを両脇に配置するため、背中がフリーになり、狭い空間も通り抜けやすいのです。さらにどうしても狭ければ、シリンダーを外して前に持ち、身体を滑り込ませることができます。
通路の先を覗き込み、安全かどうかを探ります。すると、目に入ったのは「人が張ったライン」。ここは人類未踏の洞窟のはず……と思いきや、ぐるりと回り込んで自分たちのラインに戻ってきていたのでした。

その後も視界の限界と戦いながら周囲を探りましたが、新たな通路は見つかりません。心の中で「秋葉の探検も、いよいよ終わりかな」と思い始めました。
そして最後に大きなルームの天井付近を探索してみると、天井近くの死角に新たな通路を発見しました。かなりせまい。しかしまだ先がある。。
しかしここでタイムアウト。今回の探検はここまで。 つまり次回の探検につながるてがかりを洞窟の神様にプレゼントされた気分です。


第3回遠征(2023年1月) ― 天井に隠された通路

コロナで島に渡ることができず、何度も中止を余儀なくされました。
そしてついに再開!! 本格的な探検。前回、秋葉地底湖の大ルームをくまなく調査し、天井近くの死角に新たな通路を発見しました。
今回はこの先のエリアを挑戦します。

サイドマウントでシリンダーを外しながら狭い通路を突破する場面もあり、人類未踏の空間を確かめる緊張感に包まれました。呼吸ガスの残量制限で先には進めませんでしたが、大きな手がかりを得た遠征でした。


第4回遠征(2023年5月) ― 鍾乳石の林の向こうへ

視界ゼロとの戦いは続きます。濁りが回復したタイミングで鍾乳石の林を抜けると、広い通路が出現。さらに奥へ、さらに深くへ――期待が膨らみました。

海へと通じる方向を進むと、淡水が塩水に変わり、海とのつながりをより強く感じました。しかし行き止まりに阻まれ、通路は閉ざされます。それでもこの挑戦は確かに前進でした。
この回から私はサイドワインダーリブリーザーでの探検をスタートしました。やはりリブリーザーは泡がでないため、パーコレーションの影響が少ないことは大きなメリットです。


第5回遠征(2023年9月) ― クレージージャーニーのロケ

この時の探検にはテレビ番組「クレージージャーニー」の撮影が入りました。未知の洞窟に挑む緊張感、そして水中でのやり取りが全国放送され、多くの人に南大東島の存在を知っていただけたのは大きな成果でした。TV業界のいろいろで、放送延期となり、半年後の2024年の2月の放送でした。

 

クレージージャーニーの中で加藤の紹介もしていただきました。仲間がTV画面を撮影して送ってくれたものです。


南大東島愛でいっぱいの洞窟ガイドの東さん 東さんとお話しできたことで、南大東の水中洞窟を大切に潜っていきたいと心から思いました。
陸からだけではなく、海からも洞窟を捜索しました。
吉田さんの洞窟(鍾乳石)ポーズ


第6回遠征(2024年2月) ― フォトグラメトリーと未踏域へ

この遠征では二回目となるフォトグラメトリー(Photogrammetry)を導入し、洞窟内部を三次元的に記録しました。立体的なデータとして洞窟を残すことで、今後の探検や学術的な研究にもつながります。このころにはリブリーザーを主力器材として活用していたので、排気されるガスも少なく、かなり精度の高い撮影に成功できました。

フォトグラメトリーとは、
水中で撮影した多数の写真を解析し、3Dモデルとして空間を復元する技術です。
洞窟の形状、天井の高さ、湖底の起伏まで精密に再現でき、研究や探検、ルート検討、安全計画にも役立つため、世界のケイブダイバーや科学者が活用しています。

今回のプロジェクトでも、秋葉地底湖の複雑に入り組んだ水中地形を、肉眼では捉えきれない精度で可視化することができました。
地形の広がり、分岐の立体構造、光の届かない奥行きまで、まるでその場にいるかのように感じてもらえるはずです。

南大東島の水中洞窟は、まだまだ未解明な部分が多いフィールドです。
こうした技術を使うことで、探検の精度が高まり、次のステップにつながる“地図のない世界の地図づくり”が進んでいきます。

引き続き、南大東島の探検と記録を積み重ね、未来のダイバーたちに安全で新しい冒険を届けられるよう、チーム一丸で取り組んでいきます。

フォトグラメトリー監修: 吉田勝次
フォトグラメトリー制作: 竹内考騎
撮影: 加藤大典

さらに、これまで未踏だった領域への進入も果たしました。そこにはまだ誰も見たことのない景色が広がり、南大東島が秘める可能性を改めて実感しました。


エピローグ ― 探検は続く

南大東島の洞窟探検は、視界ゼロとの闘いであり、同時に未知への扉を開く挑戦です。リブリーザーの導入、フォトグラメトリーによる記録、そして新たな通路の発見――ひとつひとつが未来への布石です。

吉田さんと共に歩んできたこの数年間は、まさに挑戦と発見の連続でした。そして探検は、まだ終わりません。

未踏の空間は、必ずその先に眠っています。

投稿者のプロフィール

株式会社インターナショナルトレーニング代表取締役DaisukeKato
ダイビング教育機関SDI TDI ERDI JAPANの代表を務めております。小さな頃から水の中への憧れが強く、潜水部のある大学に入学しダイビングを始めました。ダイビングを始めてみると、やはり最高に楽しくて、在学中にインストラクターを取得し、卒業後は尊敬するインストラクターの所属するダイブセンターに就職しました。5年の修行を積んで、ダイブセンターを創業しました。

これまで様々なコースで2000人以上の方にダイビング指導を行い、世界各地を引率してダイビングツアーを開催しました。またテクニカルダイビングに出会い、100m潜水や洞窟や沈没船のペネトレーション(内部侵入)やリブリーザーなど様々なダイビングを楽しんでいます。いまは指導団体SDITDIERDIの代表の仕事を中心にプロコースやテクニカルコースの担当もしています。2000年からダイビングショップの経営もしています。