「水中洞窟探検 なぜROV(水中ドローン)じゃないのか?」

― TVやYouTubeでよく聞かれる質問に、現場から答える ―

TVやYouTubeで洞窟探検やケイブダイビングが紹介されると、必ずといっていいほどこんなコメントをいただきます。

「なんでドローン使わないの?」
「そんな危険なこと、人がやる必要あるの?」

率直で、とてもいい質問だと思います。
実際、技術が進んでいる今、そう感じるのは自然なことです。

ただ、現場にいる立場からお伝えすると――

ケイブダイビングの探査は、現時点では“人でなければ成立しない領域”です。

今日はその理由を、少しだけリアルにお話しします。


ドローンが“入れない”世界がある

まず前提として、洞窟は想像以上に過酷な環境です。

・人がギリギリ通れる幅
・一度巻き上げると完全に視界が消えるシルト
・機材が触れただけで崩れる繊細な構造

この環境では、

ドローンはすぐに“見えなくなり”、操作不能になります。

さらに、ケーブルやプロペラは障害物に非常に弱い。
狭い洞窟では、

・引っかかる
・絡む
・その場で回収不能になる

というリスクが高い。

つまり、

👉 「入れるかどうか」より「帰ってこれるかどうか」が本質です。


探検は“判断の連続”

洞窟の中では、常に判断が求められます。

・この先は通過できるか
・進むべきか、引き返すべきか
・このルートは安全か

これは単なる操作ではなく、

経験・感覚・訓練による総合判断です。

特に重要なのは、

👉 「違和感に気づく力」

水の流れ、視界の変化、空間の圧迫感。
ほんのわずかな変化を察知して判断する。

これは現状のドローンやAIでは代替できません。


探査とは「行くだけ」ではない


探査ダイビングは、ただ奥に進む行為ではありません。

・ガイドラインの設置
・分岐のマーキング
・距離や深度の測量
・次のダイバーのための情報構築

つまり、

“安全なルートを作る仕事”です。

ドローンは映像を持ち帰ることはできても、
この「次につなげる作業」ができません。


「危険を冒している」のではない

ここは誤解されやすい部分です。

外から見ると、
「危険なことをしている」と感じるかもしれません。

でも実際には――

リスクを一つずつ管理し、成立させている。

・装備のリダンダンシー(冗長性)
・ガスの余裕を持った計画
・チームでの役割分担
・明確な撤退基準

これらを徹底した上で、

👉 「行ける」と判断したダイビングだけを実行しています。

私自身はもともと怖がりな性格なので、
不安要素が残る状態では絶対に潜りません。


それでも、人が行く理由

最後に少しだけ、本質的な話を。

技術は進化しています。
将来、水中ドローンが今より活躍する場面は確実に増えるでしょう。

それでも、

人が潜る価値はなくならないと思っています。

なぜなら――

👉 探検とは「理解すること」であり、「体験すること」だからです。

実際にその場に入り、感じ、判断し、進む。
その積み重ねが、

・安全性の向上
・技術の進化
・次世代の育成

につながっていきます。


まとめ

「なぜドローンじゃダメなのか?」

答えはシンプルです。

👉 ドローンでは“探査”はできても、“探検”はできない。

そして、

👉 人だからこそ、安全に探検が成立する。


もしこの話をきっかけに、

「すごい」だけで終わらず、
「どうやって安全にやっているのか」

そこに少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。

投稿者のプロフィール

株式会社インターナショナルトレーニング代表取締役DaisukeKato
ダイビング教育機関SDI TDI ERDI JAPANの代表を務めております。小さな頃から水の中への憧れが強く、潜水部のある大学に入学しダイビングを始めました。ダイビングを始めてみると、やはり最高に楽しくて、在学中にインストラクターを取得し、卒業後は尊敬するインストラクターの所属するダイブセンターに就職しました。5年の修行を積んで、ダイブセンターを創業しました。

これまで様々なコースで2000人以上の方にダイビング指導を行い、世界各地を引率してダイビングツアーを開催しました。またテクニカルダイビングに出会い、100m潜水や洞窟や沈没船のペネトレーション(内部侵入)やリブリーザーなど様々なダイビングを楽しんでいます。いまは指導団体SDITDIERDIの代表の仕事を中心にプロコースやテクニカルコースの担当もしています。2000年からダイビングショップの経営もしています。