冒険と探検の違い

― テクニカルダイビングで私たちが大切にしていること
先日、東海テレビのニュース番組[ニュースONE]で私たちのダイビング活動を特集していただきました。
番組の中では、
「洞窟冒険 愛知出身プロダイバー」
というテロップが表示されていました。
洞窟という未知の水中空間に挑む姿を伝えるには、
とても分かりやすく、印象的な表現だったと思います。
多くの方にとって、洞窟ダイビングは
「冒険」という言葉が真っ先に浮かぶ世界でしょう。
ただ、そのテロップを見ながら、
私は少し立ち止まって考えていました。
私たちがやっているダイビングは、本当に「冒険」なのだろうか。
冒険とは何か
一般的に「冒険」とは、
-
危険があることを理解したうえで未知に踏み出す行為
-
個人の勇気や決断が強調される挑戦
として語られることが多い言葉です。
私たちは、冒険を次のように捉えています。
冒険は、危険を覚悟して踏み出すこと。
ここで言う「覚悟」とは、
危険を軽視することでも、無謀に突っ込むことでもありません。
ただし冒険には、
-
すべてのリスクを完全に把握できない
-
想定外が残ったまま進む
という性質があるのも事実です。
探検とは何か
一方で、私たちが日々行っているケイブダイビングは、
この「冒険」という言葉だけでは、どうしても説明しきれません。
そこでたどり着いたのが、「探検」という考え方です。
探検は、危険を制御し、生きて帰ることを前提に未知に挑むこと。
探検では、
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生きて帰ることが前提条件
- 想定外を想定する
-
綿密な計画と準備
-
チームでの役割分担
-
記録し、共有し、次につなぐ姿勢
が欠かせません。
生きて帰れなければ、
情報は残らず、
経験は共有されず、
次の挑戦にもつながらない。
それは探検としては成立しません。
冒険と探検の違い
この二つの違いを、私たちはこう整理しています。
-
冒険は、危険を受け入れる行為
-
探検は、危険を管理・制御する行為
どちらが良い、悪いという話ではありません。
ただし、教育や安全、そして継続性を考えたとき、
私たちが大切にしているのは、明確に「探検」の考え方です。
私たちのテクニカルダイビング
私たちのダイビングでは、
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明確なガス管理と終了基準
-
事前の綿密な計画
-
チーム内でのコミュニケーション
-
ダイビング後の記録と振り返り
を必ず行っています。
それは、
命を賭けた挑戦をしたいからではありません。
安全を確保することで、
より自由に、より深く、未知に向き合いたい。
そして、
次の世代につながる形で、
経験と知識を残したいと考えています。
「洞窟冒険」と呼ばれて
テレビで使われた
「洞窟冒険」という言葉は、
決して間違いではありません。
ただ、私たち自身の言葉で表現するなら、
こう言いたいと思います。
冒険心を原動力にしながら、
探検として成立するダイビングを行っている。
アドベンチャーとエクスプロレーションという言葉
冒険は英語で Adventure、
探検は英語で Exploration と言います。
日本では、圧倒的に
「アドベンチャー」という言葉の方が身近です。
誰かがはじめてのことをしたり、
はじめての場所へ行ったりすることは、
確かにアドベンチャーだと言えるでしょう。
これからダイビングを始める人にとって、
水中という未知の世界に飛び込む体験は、
まさにアドベンチャーです。
ただし、ここで一つ大切な視点があります。
それを受け入れる側、
つまりインストラクターやガイドにとって、
ダイビングはアドベンチャーであってはいけません。
インストラクターは、
「危険を承知で安全管理されていない講習を行っている」わけではなく、
想定されるリスクを理解し、管理したうえで、
講習やガイドを行っています。
もし何かが起きたとしても、
適切な判断と対応ができること。
それは、ある意味、
インストラクターは、探検的発想であることが
求められます。
参加者にとってのアドベンチャーを、
安全に成立させること。
そこに、
プロとしての責任があります。
ダイビング始めたい人は、受講するダイビングインストラクターが、安全管理に対して定評があるかどうかはよく見極めて、習う人を選ぶことで、あなたのアドベンチャーがより安全なものになります。
そしてダイバーのみなさんには、経験と共に、ダイビングが冒険的だけではなく、探検的な発想で楽しんでいってほしいと思います。
最後に
冒険は、人を成長させます。
探検は、世界を前に進めます。
私たちは、
冒険で終わらせず、
探検として残すダイビングを続けていきます。
生きて帰ることを前提に、未知へ挑む。
それが、
私たちのテクニカルダイビングです。
またの機会にテクニカルダイビングと水中探検の違いについて書きたいと思います。






